2016年6月17日金曜日

さなぼり

ファーマータナカの新農業講座第8回、お題は「さなぼり」。

今年も棚田に水が張られた。
水無月の風は青く渡り、蛙の輪唱は一段と声高くなる。

田舎にいると、季節季節に、聞きなれない言葉がいくつか耳に入ってくる。
「さなぼり」もそのひとつだが、飲み会であることだけは確かだ。
かって部落の長老に、「どんな字を書いて、どんな意味なんですか?」と新規就農者の一人が尋ねたことがあったが、明確な答えは返ってこなかった。
土着の習わしとして、もう何百年と繰り返されてきた事実が歴然と存在するだけであり、それを何の疑いもなく、これからも綿綿と繰り返していくのだろう。
(ただし、当節人がいなくなってきている)

少し調べてみると、博多弁としてもあるようだし、さなぼり焼酎というものもある。
ものの本によれば、「『さなぼり』は、『さなぶり』と同義で、『さ』は稲の意で田植えがすんだ祝い」と書いてある。
漢字は「早苗振」「早苗饗」などがあてられている。
「早苗振」は、水面に稲(早苗)を投げ入れるという意味からきていると言われ、「早苗饗」は、田植えが無事にすんだ喜びと豊作を祝ってのみんなが集まっての小宴という意味のようだ。
また、「さ」は田の神様のことで、田植えの前に田の神様が降りてきて、田植え後、再びお登りになる「さのぼり」が、「さなぶり」「さなぼり」になったという説もある。

ファーマータナカは米は作っていなかったので、関係ないと言ってしまえばそれまでだが、毎年参加して酒だけはしっかり飲ませていただいた。
青嵐に弱々しいながらも立ち向かう苗が、やがて漣み頭を垂れるまでになる、その生きとし生けるものの健気さと力強さに想いを馳せ、生半可な気持でなく酔いどれるのが、田舎に生きる者の務めだったのだ。
(画像はうきは市の棚田・2002/06/02記を加筆修正)


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